風に散る

花橘を　袖に受けて

君が御跡と　思ひつるかも



はじめてみたのは、友達に連れていってもらった６月の競技場だった。
予選一回戦から他の選手に圧倒的な差をつけて
貴女は走り抜けていた。

かっこいいでしょ!!と黄色い視線をおくる友人に
貴女の一挙一動で黄色い歓声をあげる友人に
実はちょっと引いていたんだけど
（だって同じ女なのに）
どんどん惹かれてく私がいた。

同級生の男の子たちが子供にしか見えなくて
恋なんて考えてもみなかった私が。

貴女に恋する友人たちの数は、どんどんどんどん
増えていっていつのまにかファンクラブが出来た。
ファンクラブには１つだけ、ルールがあった。

ディープブルーの髪の女性が１番目、私たちは全員が２番目。

といってもブルーの髪の女性がファンクラブに入っていたわけではなかった。
彼女はいつだって貴女のすぐ側にいて、貴女も彼女を特別に扱っていた。
ふたりには何か絆みたいなものがあって、とても私たちが仲にはいれそうもなかった。
私たちは全員が２番目で、みんな同じで、
それがかえって私たちファンクラブの仲を取り持っていた。

でも私は貴女のいちばんになりたかった。
きっとなれないのは　
わかっていたけど。

手紙を書く気にはなれなかった。
貴女に受け取って読んでもらうことは出来たろうけど、
みんなと同じ2番目じゃ嫌だった。

１月の陸上競技場は寒い。
誰もいない。
貴女を最初にみた、貴女が風のように走っていたレーンに立つ。
かじかむ手を暖めながら空を見上げる。


君が御跡と　思ひつるかも




＊

はるかさんを好きになっちゃった女子中学生くらいの子が、なんらかの理由ではるか誕生日を知り、他の女の子たちと同じように誕生日プレゼントをあげる勇気がなく、前にはるかさんが走ってた競技場にいって物思いにふける、という設定です（長っ

歌は万葉集です…っていうか櫻の園＠吉田秋生のパクリです。
タイトルは思春期の重め設定です。means ”愛しています”

[3回]