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百合のカリスマについて書くブログです
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パーティーよりもふたりきりのドライブがしたいはるかさんと、買い物好きなみちるさんの話。


僕はあと10分で閉店になるデパートのなかで、ほとほと困り果てていた。
もうすぐパーティーの時間だというのに、海より深いブルーの髪色を持つパートナーがその細い指をあごに当て真剣な眼差しでメンズシューズを眺めている。
その3歩うしろに下がったところで、僕は腕時計とにらめっこしている。

2時間前、僕らは一緒にコンドミニアムを出ようとしていた。
夜はエドワーズが主催するダンスパーティーに招待されていたのだ。幸い、今回僕らは演奏する必要はないらしく、招待時間にいけば十分だ。
しかし。

「あら、はるかのその靴、磨かなくちゃいけないわ」

玄関先で彼女のさくらんぼのような唇がそう告げた。
…こうして僕の、パーティーの前のドライブでみちると寄り道をしたいという願望は次回に持ち越されることとなった。

それにしても、買い物をしている彼女は楽しそうだ。
(たとえそれが自分のものでなくっても)
あの調子だとパーティーに行く時間、いや今夜僕らは招待客であるということも忘れてしまっているのではないだろうか。

「ねぇ、みちる。そろそろ出ないと間に合わないぜ…」
「はるか!この靴とあれと、ついでに靴下の色も揃えたいわ。私このダークブラウンの靴が気に入ったんだけど…」
「履き慣れてない靴でワルツを踊って、君の足を踏むことだけは避けたいな」
少しは時間も気にしてくれ、という意味も込めていったはずなのだが、恋人は「そんなことあるはずないわ」と優雅に微笑んだだけだ。

長いため息をつき、ふとシューズメイクのコーナーに気がついた。
なんとかの毛のブラシやら、靴の形状をした木やら、ラックに引っ掛けるように陳列されている。その中に小さな円形の入れ物を発見した。見ると様々な色の名称が書いてある。いま自分が履いている、みちるは先端の色落ちが気になるようだけれど履き心地がとても気に入っているこの靴と、同じ色のものもある。

「これで磨くだけじゃ、駄目なのかい?」
靴を手に取りすでに店員と話し込んでいるパートナーに話しかけてみた。
「別に構わないと思うけれど…」
みちるが何か続けようとするとすかさず店員が割り込んできた。
「お客様のいま履いてらっしゃる靴ですと、こちらの色がよろしいかと思います!」
どうやら店側も、閉店間際にやってきた買い物好きの客は早く帰したいようだ。
「会計はこちらになります」という店員の声に従って、してやったり顔で向かう。さてこの分だとギリギリで、5分くらいはドライブかもしれない。





で、結局エドワーズさんのお屋敷にはいる直前に、はるかさんは運転席で前屈みになって適当にハンカチで靴をふいてみちるさんに怒られる。という話(そこまで書け)。山田


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